球体関節人形の作り方・張り込み編 第二回
張り込み技法の続きです。
《実践法》
一、粘土を練る
型の準備ができたら、粘土を練ります。
作例ではラドールを使っています。
買ったばかりのままでは少し硬いので、
適当な水分を加えてちょうどいい硬さに練っておきます。
曲げたときにヒビが入らないくらい、
フニフニ軟らかい状態が作りやすいです。
重要なのは、とにかく均一な硬さに練ることです。
均一に練れていないと、乾燥時に
歪む原因になります。
しっかり練ることが出来れば、やり方は何でも良いのですが、
陶芸家は、先ず荒練りというものを行います。
荒練りは検索すれば、youtubeで見れるでしょう。
そんなに難しいものではないので、
動画を見れば、ほとんどの方が出来ると思います。
粘土の硬さが均一になったら、最後は菊練りなどで
空隙を除いておいた方が無難であると思われます。
ただ、いわゆる菊練りだとうまくいきません。
石粉粘土は感触が磁土に類似しているので、
私は磁土の練り方に近い方法で対処します。
出来ない人はこの練り方(名前が分からない)でも
うまくいくと思います。
実は菊練等で気泡を抜かない場合、
やったことがないので、どうなるかは分かりません。
均一に練れていれば、意外と平気な気もします。
やらなくても良いのかもしれません。
二、粘土をのばす
粘土はあらかじめ粘土板にたたきつけて、
なんとなく四角くしておきます。
その後で必要な量を切り取ります。
石塑はケバが入っているため
ワイヤーではうまく切れません。
そのため、粘土の両脇にたたらを置いて
めん棒でのばしていきます。
画像のたたらは5ミリ厚のものを使っていますが、
パーツの大きさによって、厚みを使い分けましょう。
この作例では手、腕、上腕、足、脛は四ミリで、
それ以外は全部五ミリです。
のばすとき同じ方向にだけ、めん棒をころがすと、
乾燥時に一方向に縮みやすいです。
それを防ぐため縦横に向きを変えながら、
少しずつのばしていきます。
もし粘土に気泡が入っていたら、
針で刺して、抜いておきましょう。
のばし終ったら、型の大きさにあわせて
剣先等で切ります。
続く。
球体関節人形の作り方・張り込み編 第一回
予告通り張り込み講座を行います。
張り込みというのは型の内側に、
薄い粘土の板を貼り込んで作る成形技法です。
この成形方法は、もともとは(たぶん)陶芸技法ですが、
石粉粘土にも応用できます。
某球体関節人形技法書の二巻にも載っていますが、
こんな技法は陶芸家なら誰でも知っています。
失礼ながらあの本に載っているのは、
しくじりやすいやり方です。
あれでは乾燥で歪んだり、接合部が切れてしまいます。
(実際写真でそうなっている)
もっと失敗のない方法があるので
本日から何回かにわたり、それを
ご紹介しましょう。
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先ず型を用意する必要がありますが、
昨日までに私が行った方法と、ほぼ一緒です。
型を割らないため、割線(パーティングライン)
を決めるときは、アンダーカット(抜けない勾配)
にならないように丁寧に行いましょう。
粘土の原型から型を取り、内側に
サフを吹いて研いでおくまでは
これまでの説明通りです。
そこから先で若干違う点が二つあります。
一つは割線の横に溝を彫っておくことです。
これは意図的にバリを作ることで、
合わせ目を確実に密着させるためです。
溝は彫刻刀で削ります。
型取り直後濡れているうちにやってもいいし、
内側を研いでからでも良いです。
もう一つの違いは、脚などの細長い部品は
関節の球の途中の部分まで、型を取ることです。
必ずしもこうする必要はありませんが、
球の部分と筒の部分を別々に作っておけば、
指が届かずに押さえが甘くなるようなことがありません。
陶土の場合はこんなことをする必要はありませんが、
歪みやすい石塑の場合はこうしておいた方が無難です。
ただし、お人形の大きさにもよりますが、
腕や上腕は一体で型取りしても良いと思います。
参考までに他の部品の画像も、
上げておきます。
私の場合、頭は顔と蓋で別々に作ります。
耳は外れるようにしておきます。
手足は三つに割ります。
手の指には貼り合わせる段階で、
針金を入れて作ります。
ズレ防止のツメは、必ず画像のような
四角いものにしましょう。
理由は後述します。
・・・続く。
予告!! 張り込み技法講座をやります。
お人形を作るとき、発砲スチロールの中子に
粘土を包む手法を採る方が多いと思いますが、
型の内側に張り込んで作ることもできます。
↑今回作った型ですが、私は
全てブッ壊してしまいました。
しかしこの型は、ある細工を施すと、
張り込み型として使うことができます。
しばらく退屈な作業が続くため
明日からその方法をご紹介しましょう。
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今日もデッサン会へ。
受験生の頃の私にとっては、デッサンなど
入試のための方便でしかありませんでした。
しかし今になってつくづく思うのは
こういう地道な訓練が、非常に大切で、
現在とても力になっているということです。
そのうち超初心者向けにデッサンの
解説講座でもやろうかとも思っています。
そうすれば少しはデッサンに興味が出て、
訓練してみようと思う方が現れるかもしれない。
石膏原型・足を作る ・・・ 制作記七十二
いよいよ最後となりました。
足を作ります。
足の指のような細い部分は
石膏が入りづらいので、空気抜きのために
指先に溝を切っておきます。
石膏の注ぎ口は、踵に開けます。
以前はもっと面倒くさい
やり方をしていたのですが、
このほうが無駄がありません。
着色に使う弁柄ですが、
このくらいの量で良いです。
画像の弁柄は、私が釉薬試験用に
使っている物なので、あらかじめ
百目の篩に通してあります。
篩っておくか、空摺りして
ダマを潰しておけば、事前に
乾いた石膏と混ぜなくても大丈夫です。
その方が添加量を判断しやすくはあります。
それと足や腕は小さいため、
二回目の注型で、型いっぱいに
石膏を入れて、そのまま固めています。
つまり中空ではなく、無垢の塊になります。
こういうと「一回目で、なみなみ注いで
固めてしまえば、いいんじゃないの?」
と思うかもしれませんが、
それではダメなんです。
原理は良く分かりませんが
一回の注型で石膏を満たしてしまうと、
硬化後の表面が荒れます。
型の表面付近に水分や気泡が集まるせいか、
鬆が入ったプリンみたいになることがあります。
(↓こんな感じ)
特に型をしっかり水に浸けておかないと、
こうなりやすいです。
それ故一回目は薄く着肉するにとどめ、
必ず余分な石膏は捨てるようにします。
大過なく足が出来ました。
左脚の玉の際に気泡が入っています。
この部分も、型に空気抜きの溝を
数本掘っておいた方が良さそうです。
この後全ての原型が、完全に
乾くのを待ちます。
石膏原形進捗 ・・・ 制作記七十一
ほぼ全ての原型が出来ました。
思う所があり、足だけは
後回しにしています。
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今回型を壊しながら、効率の良い
砕き方を思いだしたので、
今日はそのコツを紹介しましょう。
先ずは割線付近を狙って、
鑿を入れます。
すると向こう側の型の面が
露出するので、そこを叩きます。
ばこっと取れます。
位置を変えて、同じことを
繰り返します。
またボコッと取れます。
片面が取れたら、反対側も
同じように叩きましょう。
簡単に外れます。
小さい部品なら一か所叩くだけで、
全体が一発で取れるでしょう。
的確に石鹸の処理が出来ていればですが。
外れにくいようなら、それは
カリ石鹸の効きがあまい
可能性があります。
それと注意点としては、顔の場合
一気に全面を外そうとすると、
瞼や鼻を傷つける危惧があります。
繊細な部分は、少しづつ細かく砕いた方が
良いかもしれません。
それと石膏の着色は
このくらいの濃さで十分だと思います。
こないだのは、紅柄を入れすぎました。
石膏原形・型を壊す。 ・・・ 制作記七十
注型した石膏が硬化したら、
型を壊して、原型を取り出します。
使う道具は玄翁と百円ショップで買った
マイナスドライバーです。
ドライバーを鑿のように叩いて
型を慎重に砕いていきます。
この作業は膝の上でやると良いでしょう。
注型一回目に石膏を着色してあるので、
どこまで砕けば良いか、非常に分かりやすいです。
・・・分かりやすいとか言いながら、
鼻先をやってしまいました。
鼻のような周囲より出っ張っている部分は
ありがちなことなので、気をつけましょう。
耳も欠けていますが、
砕いた石膏を除去する際に、ドライバーで
こじるように取ろうとしたためです。
大きな塊を、ぐりっと外そうとすると
原型が欠けたりするので、
これも気をつけましょう。
修正は石膏が乾いた後で行います。
鼻はパテで埋め、耳はかけらを取っておき、
接着剤でくっつけます。
バリや鋳込み口など、出っ張っている部分は
石膏が乾く前に削っておくと良いでしょう。
私は胸部脇の部分を抉っていますが、
これは服の厚みで腕が
下がらなくなるのを妨ぐためです。
この部分は身頃の切り替え線(脇縫い)が
来るため、縫い代がかさばります。
人形の場合、布の厚みの影響を
受けやすいので、こういう工夫が
必要になってきます。
私は間違えて粘土原形の段階で
溝を作ってしまいましたが、
石膏の段階で削った方が良いでしょう。
バリなどを削り終ったら、
一度完全に乾燥させます。
このやり方なら玉受けも、
しっかり作ることができます。
石膏原形を作る・其の四 ・・・ 制作記六十九
ブログ記事の題名が
分かりづらいようなので、
今日から規格変更してみる。
・・・石膏原形の続きです。
型に何回か石膏を流すのですが、
一回目は、顔料で着色しておくと
後で分かりやすいです。
使う顔料は、粒度が細かければ
何でもいいと思います。
私は弁柄を使っています。
理由は比較的安価なのと、
手元にいっぱい余っているからです。
混ぜる量は少し色が付けば良いので
少量で良いです。
入れすぎると石膏が
脆くなるっぽいです。
あらかじめ少量の石膏を取り、
それに顔料を混ぜておくと良いでしょう。
画像では色が薄く見えますが、
水を加えると濃くなります。
むしろ入れすぎたくらいです。
手順としては、先ず用意した水に
着色した石膏を混ぜ、
あとは必要なだけ普通の石膏を
投入すれば、無駄がありません。
石膏を溶いたら型に注ぎます。
全体に石膏が付着するように、
ぐるりぐるりと静かに型を回しつつ、
すぐに余分な石膏を排出します。
一人で作業しているため、
撮影はできませんので、
想像してください。
一回目は中の石膏を
すぐに捨てないと、
カリ石鹸が利かなくなると言われます。
上の画像は一回目を捨てたところです。
流し込んだ石膏がほぼ硬化したら、
同じ作業を何度か繰り返します。
開口部が大きい場合はスタッフを使い
あと二三回張り付ければ良いのですが、
この場合は、何回も
流し入れるしかありません。
回数ですが今回の場合、
胸や腰など大きい部品で六回、
足や腕など小さい部品で四回もやれは
十分でしょう。
注ぎ口が小さい物は
詰まりやすいので、一回ごとに
石膏を拭き取っておくと
良いでしょう
注型が終わったところです。
いくつか型を並べて、
同時に行うと作業が効率的です。
特に二回目以降は、気泡の混入とかを
気にしなくて良いので、
いっぱい並べて一気にやっても良いです。
・・・・・・眠い。
この続きは明日にさせて下さい。